老・四弦奏者のブログ

アラ古希のローテクMusicianのブログです

怪談?44年前の金縛り体験

このところYouTubeやテレビで、やたらに怖い話や恐怖体験番組など見ているうちに、学生のころに体験した「金縛り」を思い出しました。
金縛りは霊的なものではなく、あくまでも医学的な現象であると、テレビで多くの専門医が説明しています。
私は、それはそれで大いに納得しているのです。
でも、理論的に納得したとしても、あの時感じたあの「音」「気配」「感触」「息遣い」「重さと言うか圧迫感」「吐息」は、44年近く経った今でも決して忘れられません。
経験は、年月が経つとすこし大げさな記憶として残ると言いますが、これからお話しする内容は、決して誇張しているつもりはありません。
 
その経験は、私が卒業前の二十一歳の大学生の晩秋のころでした。
その当時、狭い実家の和室の居間で寝ていた時でした。
時間は、たしか夜中の1時頃だったと記憶しています。
頭はまだ寝ていない状態で、当時悩んでいたり気になっているいろいろなことを考えて悶々として寝付けないでいたのです。
仰向けに寝ていた時、いきなり足の甲から脛にかけて、何かが乗ってきたような圧迫感に襲われました。
「え?」って思いました。
ああ、これが金縛りなのか・・・でも頭は冴えているんだけど、違うのかな・・・
ふすま1枚隔てた妹か弟のいたずらとは絶対思えない、いや、それ以前に、妹弟たちではない「別の何か」の仕業だと直感したのです。
なぜならば、ふすまが開いた音はしなかったし、歩く音もなかったし、いきなり足の甲、足首、脛、膝、と、何の音も発せず、圧迫感はかなり速いスピードで上に移動してきたからです。
現状把握をする間もなく、直感的に「これはヤバイ!」と思ったのです。
目を開けるかどうか迷う時間さえなく、太もも、腰、下腹、そこで何故かいったん間をおいてから、胃と胸の上にドサッと「それ」は乗ってきたのです。
「ヤッベー」と正直思いました。
どうしてやろうか・・、「それ」は俺が眠っていると思っているのか、起きていると思って仕掛けてきたのか・・・それによっては対処の仕方を変えなくては・・・
でも、最初の「攻撃」に対して、私は何もリアクションしなかったから、たぶん「それ」は私が眠っていると思っているはずだと判断しました。
圧迫感は明らかに人が覆いかぶさったような感覚で、その重さから判断して、大人ではなく小学生低学年程度の子供の重さに感じたのです。
「それ」は胸まで覆いかぶさった後、少しそのままの状態でいました。
私は、1、うっすら目を開けて相手の正体を確認する。2、「それ」が「ヤバイもの」であった場合、両手両足を使って全力で「それ」をはねのけ、大声出して家族を起こす。という二つのアクションを立案しました。
さあ、いつやろうかと臨戦態勢を整えている矢先「それ」はいきなり、のど、そしてすぐあごを圧迫してきました。
そして、あ!っと思う間もなく、私はなにか「吐息」のようなものを感じたのです。
その時初めて気が付きました。
圧迫が脛の時点では手と腕は動かせたのに、その時は腕も肩も首さえも動かせなかったのです。
この状態で、1、うっすら目を開けて相手の正体を確認する、というアクションは、そのあとの有効な反撃に移れない可能性があったので、怖くてできませんでした。
目を開けたあと「それ」を確認して、それが実際に「怖いもの」だったとして、反撃するための腕も肩も動かないなら、このまま眠っているふりをすれば、「それ」はあきらめて去っていくかもしれない。そう思ったのです。
でも、正体不明の「それ」は、あごまできたあと、少し時間をおいてから、今度は私の口と鼻を塞ぎ始めました。
でも、手のような「接触」による行為ではなく、何か「ひんやりとした気体」のようなもので鼻と口を塞ぎ、息ができないようにされている感覚でした。
さすがの私も覚悟ができました。
呼吸を止められてまで我慢して眠っているふりはできません。
そこで、私は「臨戦態勢」のレベルを最高ランクまで引き上げました。
反撃のための状況把握のためのとっかかりを探す少ない時間の中で、1、腕と肩は動かないが、指は動く。2、最初は動かなかった足は、今は動かせる。ということが分かりました。
よーし!怒ったぞ!
幽霊(幽霊かどうかは断定できませんでした)なんかにナメられてたまるか!ふざけるな!
俺はお前なんかの自由にさせないぞ!
目一杯の自分を鼓舞させるフレーズを頭の中で叫んで、反撃に出ようと思ったのですが、そこでもう一度冷静になって考えました。
まず、大の字で仰向けになったかっこうで、お腹からあごまで押さえつけられた状態で、「それ」の具体的な大きさとか形とかを把握できないのに、動かせるようになった足だけでの最初の反撃で「それ」を跳ね飛ばせることが私にできるのか?
続けて、手による第2次攻撃がすぐできるのか?
そのためには、まず起き上がって「立つ」ことが必須条件ではないのか?
ということから、私はまず素早く起き上がって「立つ」ために、そして、それが失敗した場合でも、私の反撃で少しはひるむであろう「それ」が手を緩めたあと、利き腕の右手で殴るために、まず膝を立てながら立ち上がる準備をしつつ、いかにも寝ぼけて右側に寝返りを打つふりをして、右手を下に引いて、パンチを浴びせるための態勢をとることにしました。
よし!いくぞ!
決心して、左ひざを立てて右側に寝返りを打ちました。
 
その瞬間「それ」は、フッと私から離れたような気がして、のしかかられていたような圧迫感が急に消えたのです。
私は、勇気を出して目をうっすら開け、目の前には何もいないことを確認した後、右手で短いジャブを数発放ちながら急いで立ち上がりました。
そして「わー!」と大声を出しながら、部屋の真ん中にある蛍光灯のスイッチのひもを引いて明かりをつけました。
夜中の2時すこし前でした。
そして、部屋には私以外誰もいませんでした。
もちろん、ふすまの向こうで寝ている妹弟は眠ったままです。
「それ」は何だったのか?まだどこかで隠れて私が寝るのを待っているのか?
そう思うともう眠れません。
結局、明かりをつけたまま、朝、母親が起きてきた5時ころまで、私はテレビの深夜番組を見ていました。
翌日から私は、武器としての金槌を寝床に入れ、妹弟たちの眠るとなりの部屋とのふすまを開けて寝るようにしました。
それ以来、金縛りにあうことは今のところありません。